阿修羅について

阿修羅像について

 阿修羅像はもと興福寺西金堂(さいこんどう)に釈迦三尊、梵天・帝釈天、四天王、十大弟子像などとともに安置されていた八部衆のうちの1体です。この堂は光明皇后が前年の1月に亡くなった母橘三千代の一周忌に間に合うように創建したものです。

 3つの顔と6本の腕をもつ少年のような可憐な像ですが、胴体も腕もとても細く、憂いのある敬虔な表情が脱活乾漆造(だっかつかんしつづくり)の技法でとてもリアルに表現されています。阿修羅はインド神話では軍の神で、激しい怒りを表すのが一般的ですが、興福寺の阿修羅像に激しさはどこにも見られません。

 阿修羅像は、当時、唐からもたらされた『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』をもとに作られたと考えられますが、そこには、これまでの罪を懺悔して、釈迦に帰依することが説かれています。阿修羅の表情は静かに自分の心を見つめ懺悔する姿を表したものと考えられます。 (九州国立博物館 阿修羅像説明より)


http://www.kyuhaku.jp/exhibition/exhibition_s16.html



思いやりのない正義は阿修羅の正義
インド神話の中に、アシュラとインドラという神様がいます。
アシュラは正義の神で、インドラは力の神です。
アシュラには舎脂(シャーチー)という娘美しい娘がいました。

あるとき、アシュラの娘を見て気に入ったインドラは力でもって彼女を無理やり自分の宮殿に連れ去っってしまいました。
父親のアシュラは当然怒ります。
そして、武器をとってインドラに挑みます。しかし、インドラは力の神です。
正義の神であるアシュラが、力の神に勝てる訳がなく、戦いはアシュラの敗北に終わります。
それでも、娘を奪われたアシュラの怒りは烈しく、なおもアシュラはインドラに戦いを挑むのです。

戦いは何度繰り返しても、アシュラは負け続けます。にもかかわらず、アシュラは執拗に戦闘を繰り返します.
その結果、面倒になったインドラは、ついに正義の神のアシュラを神々の世界である天界から追放してしまったのです。

「阿修羅」はインドヒンドゥーの『太陽神』もしくは『火の神』と表記しています。
インドラは、 帝釈天と呼ばれています。
このアシュラ(阿修羅)とインドラ(帝釈天)戦いの場を修羅場(しゅらば)と呼ぶそうです。


日本語では、争いの耐えない状況を修羅道に例えて修羅場(しゅらば)と呼ぶ場合もある。
激しい闘争の行われている場所、あるいはそのような場所を連想させる状況を指しています。

(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

阿修羅
仏教はこの神話にもとずいて、敗北者のアシュラを「阿修羅」または「修羅」と呼んで魔神にし、勝利者のインドラを「帝釈天」と呼んで護法の神にしました。
すなわち、正義の神を魔類にし、力の神を護法の神としました。
それが仏教のとらえ方です。


この結末に納得できない人が多いと思います。
父親として娘を暴力でとられたアシュラが怒るのも当然のことですよね。

しかしながら、帝釈天の行動はほめられたものではありませんが、過去の出来事をいつまでも根に持って、みずからの「正義」にこだわりつづけている阿修羅の心の狭さの方がもっとよくない、仏教ではそう考えるているのだそうです。

さらに暴力で帝釈天の女とされた阿修羅の娘は、実は幸福な帝釈天の妃になっているのです。
にもかかわらずこだわりつづけるのは、魔類の正義「阿修羅」に他なりません。

帝釈天のエピソードの中にこんな話もあります。
珍しく負け戦で、逃げていく帝釈天の軍勢の行く手に、道の上を何万匹ものアリが歩いていました。

それを見て、そのアリを助けるために、帝釈天は軍勢を再び元の逃げてきた方に引き返させているのです。
【アリではなくガル-ダ(霊鳥)が巣を守っていたという説もあります】

逃げている軍隊がとって返すなど普通はありえない行為でよね。
それができるのは、帝釈天は力の神であって、弱いものに対する同情心、あわれみの心があるからだというのです。

おそらく正義の神である阿修羅には、それができかったのでしょう。
正義のためには、少しぐらいの犠牲はやむを得ない、そう考えるのが正義の特色です。
ですから、正義にこだわり、自らの正義ばかりを主張しつづけて相手の立場を考えない、

そんな正義は魔類の正義となります。

仏教はそんな思いやりのない「正義」にこだわるなと教えているのだそうです。

なかなか深いものがありますね。


阿修羅像

阿修羅にまつわる神話

様々な神話の中の阿修羅。

この阿修羅ですが、どういう存在なのか、宗教というものは、なかなか起源がはっきりしていません。
阿修羅についてもここが起源だとは言い切れないのですが、明確なのは、インド神話です。

ヴェーダ文献の中に、インド神話が書かれており、神には二つの系統があると記載されているそうです。

それがデーヴァ神族とアスラ神族です。
デーヴァ神族の代表がインドラです。
アスラ神族の代表がヴァルナです。

一方、イラン神話というものがあります。
インド神話もイラン神話も、源流は同じです。

源流が同じですから、「アスラ」はイラン神話にも存在します。
それは最高神アフラ・マズダーです。
正確には、ヴァルナ=アフラ・マズダーです。
アフラ・マズダーは、一説によれば、大日如来、阿弥陀如来の源流とされています。

インド人は、アスラも善神として拝んでいたのですが、やがてイラン神話に対抗し、アスラを悪魔の位置に落してしまいます。

その後、インド神話では、アスラ=悪魔となったようです。
アスラとはアスラ神族という、神々のグループですが、この中のヴァルナをはじめとする有力な神は、デーヴァ神族にしてしまいました。
残りのアスラ神族を悪魔として扱ったのです。

インド神話とイラン神話は源流は同じなので、インド神話におけるデーヴァ神族も、イラン神話にも存在します。
イラン神話ではダエーワと言い、悪神とされています。

インドでは善神でも、イランでは悪神となった阿修羅。
なかなか興味深いところですね。

ギリシャでは、神的な力のことを「Daimon」(ダイモン)と言います。
このDaimonが、悪魔である「Demon」(デーモン)の語源になっています。
デーヴァ、ダエーワと言葉が似ていることから、ギリシャ神話にも関連しているという説もあります。

アスラの源流をアッシリアの最高神アッシュルとする説もあります。

アスラはやがて仏教に取り入れられ、阿修羅となりました。
アスラはアスラ神族という神々のグループでありますから、仏教に取り入れられても、やはり、複数です。

パーリ経典の中には、Ra-hu、Vepacitti、Sambara、Paha-ra-da、Verocana、Baliという5人の阿修羅が描かれています。
その後、大乗仏教においては4人となります。

仏教では、また別の阿修羅にまつわる話があります。(前記参照)
「阿修羅は天の一族でありました。
この阿修羅族には舎脂という娘がいて、これを帝釈天が奪った。
それで、阿修羅と帝釈天は戦争になり、数度の戦いの後、帝釈天が勝った。
それ以来、阿修羅は悪として扱われるようになった。」
という話

帝釈天の起源ですが、これは「インドラ」と言い、トルコ、メソポタミア、インドで信仰されていた神です。

髪や髭が赤く、豪放磊落な性格で酒好きで女好きで、人妻に手を出し、呪いを受けたこともあるそうです。
ですが武に長けていたので、武神として悪に敵対しています。

一方、ゾロアスター教は、善か悪かの二元論ですから、そんな中途半端なことは許さないためゾロアスター教ではインドラは魔王とされています。

悪魔とされてしまった阿修羅も、大乗仏教では正法を守る護法の神として、再び名誉挽回します。

阿修羅はゾロアスター教の最高神、アフラ・マズダと同一であるとします。
アフラ・マズダが阿弥陀如来と同じであれば、阿修羅って、阿弥陀如来になるのではないでしょうか。

複雑な宗教が統合され、神話がいろいろあればこのようなことも起こりえるということでしょうか。
ますます、宗教は難解と言うことでしょうか。

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河原 由雄
1936年、京都市に生まれる。京都大学大学院修了。奈良国立博物館学芸課長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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